第380回 サンデーセミナー
【日時】 2021年 3月14(日) 9:50~12:30
【会場】 zoom会議室
セントラルフォレスト(岡山市北区本町6-30第一セントラルビル2号館8階)より中継
【講義プログラム】
■『消化器領域の漢方治療』
坂田 雅浩 先生
(独立行政法人国立病院機構福山医療センター 消化器内科医長)
■『がんの疫学・診断・治療について』
三ツ木 祐介 氏
(大鵬薬品工業株式会社)
【研修認定単位】 1.5単位
漢方薬は西洋薬と異なる独特の概念などのため、苦手意識を持つ薬剤師も少なくありません。しかし薬剤師の役割は、単に医師の処方に沿った薬を調剤して患者さんに手渡すだけでなく、薬の特性を熟知し医師の処方意図を十分に理解して、なぜこの薬が必要なのかを患者さんにしっかりと伝えることにあります。
そこで、第380回サンゼミオンラインは、臨床医のお立場から坂田雅浩先生にご登壇いただき、消化器領域の漢方処方を見る極意を教えていただきました。
・西洋医学との比較における漢方の有用性・・病態の概念・思想哲学・薬理作用
・代表的な漢方の有用性と治療報告・・構成生薬の薬能と適応
・薬能・・代表的処方の構成生薬のその適応
・漢方製剤・・・組成と薬能と組み合わせ
・薬物療法としての漢方・・・器質的異常と機能的異常
・気について・・機能と精神の二つの側面
・漢方治療の基本原則・・・補法と瀉法
・癌治療における漢方の位置づけ・・・副作用の軽減・症状の緩和(QOLの改善)
漢方医学と西洋医学それぞれの長所を組み合わせて新しい発想で治療されている坂田先生。
台湾の漢方製剤の調剤の様子を動画で見たり、様々な症例と治療に用いる漢方処方の組み合わせを様々ご紹介いただき、医師が何に着目しているのか具体的にわかりやすく学ぶことができました。
また、気血水・五臓六腑など独特の概念がある漢方ですが、生薬の薬理・薬能を理解することで薬効を判断することが可能になるという処方解析のヒントをいただきました。
【受講者のこえ】
■ 漢方薬は苦手で何が何に効くかという大体の効果しか理解できていなかった。今回の話を聞いて配合されている生薬の一つ一つに薬理作用があることを改めて知れたので、その作用を踏まえて処方を見ていきたいし、患者さんに説明していきたい。
■ 自店でも漢方治療を受けている患者さんがよくいるので非常に参考になりました。漢方分野を学ぶ機会はあまりないので興味深くとてもよい内容でした。
■ 漢方治療においては構成生薬の薬能を意識しながら投薬すると、より的確なアドバイスができるようになると思う。もっと漢方・生薬について勉強していきたいと思う。
■ 漢方薬が処方されている患者様の状態を理解する助けになる講義でした。具体的な症例の中で、漢方薬が果たす役割を十分理解することができました。漢方薬を一つ一つ見るのではなくグループとしてみることの必要性を感じました。
■ 東洋医学(漢方)では西洋医学ではない考え方の病態があり、そのような病態があるということを知っておくことは、患者さんと症状等の話をする際に大切だと感じました。
■ 西洋医学・薬学と漢方医学・薬学が違うのは当然として、それを組み合わせて新しい医療に挑戦していく考え方はすごいと思いました。正直、簡単にはまねできない面もあります。
■ 入っている生薬を見て処方意図が予想できるようになりたいなと思いました。コツコツ覚えるしかないですね。また、漢方を注腸することがあると知って驚きました。
■ 漢方薬を服用してもらう際に、薬能と薬理の両方から考える必要性を今回の講義を通じて感じました。今回解った漢方薬について、実際に薬局で接している患者さんに当てはめて考えていきたいです。
■ 漢方処方は西洋医学よりオーダーメイド医療的な側面が大きいと思うので、患者個々の状況を広い範囲で把握し、処方の持つ意味を読み取って服薬指導に当たりたい。漢方処方に対する理解は日ごろから難しく感じていますが、今回処方の実例を多く上げて説明いただき、漢方処方の考え方と使い方への理解が少し深まったと思います。
■ これまでは添付文書等に書いてある適応しか見ていなかった気がします。総合内科で漢方薬が使われるときなど、一般的な適応に当てはまらないような使い方をされ疑問に思うことがありました。薬能を理解するとそのような時にも適切に患者さんにアドバイス・説明することができると思いました。とても興味深い内容でした。
■ 慢性便秘と生命予後が関係するデータを見て、便秘に対する考え方が少し変わりました。便秘に対しても食生活や生活スタイル等を聞いて相談に乗ることもできるのか、と考えました。
■ 漢方の処方で投薬の際、効能と用法の説明をしていますが、構成生薬の薬能、「補」「瀉」という基本原則を考えて、より分かりやすい指導に努めたい。
■ 「気虚」を弛緩性機能低下、「気滞」を緊張性機能異常と捉えると「気」がよくわかりました。
■ 漢方薬は学生の時とても苦手で、今回の講義を学生時代に聞きたかった。それぞれバラバラに捉えるのではなくて、二陳湯と六君子湯などのように関連付けて捉えていくもの、とわかったことが私には大きな収穫でした。
■ 漢方を選ぶときに証にとらわれていることが多かったですが、成分の効能、薬効薬理を詳しく知っているとそこから生薬を選んでいくほうが選択しやすさにつながることが理解できました。
■ 漢方薬の服薬指導の時に、処方医の意図を理解するために患者様の相談内容を聞いてから効能を伝えるようにしたい。思い込みの指導は間違いのもとになる。
■ 漢方の講義は今までもいろいろと聞いてきましたが、坂田先生のお話はとても分かりやすくて良かったです。また講演していただきたいです。
■ 内科と耳鼻科の門前のため多くの漢方が処方されるが、風邪や頭痛以外ではどういった症状に合わせて処方された漢方かなかなか患者さんから問き取ることができないことがある。漢方治療の気虚・気滞の考え方と生薬の薬能から病態を推測できることを学んだ。主な生薬の薬能を理解し、処方された漢方製剤の作用を理解し処方意図を推し計れるように努めたい。「今日はどうされましたか?」と問いかけるばかりの声かけから、「食事が進みませんか?」「吐き気強いですか?」 「お腹が痛みますか?」など体調を気遣う言薬を添えたお声かけができるように生かしていきたいと思います。
続いて、大鵬薬品工業株式会社の三ツ木祐介氏より、がん治療について講義いただきました。
・がんの疫学診断治療についての概略
・現在の抗がん剤治療と副作用対策について
【受講者のこえ】
■ がんに対する基本的な知識を丁寧にわかりやすく説明していただき、あらためて理解が深まりました。
■ がんの治療において、各薬剤ごとの副作用の発現時期と対応のポイントを押さえておくことで、患者さんの不安を少しでも和らげることができたら、と思う。
■ 患者さんやほかの医療従事者と話す際に生かせる知識です。
■ 自店ではがんの処方が来ることはほぼ無いけれど、お薬手帳から治療中だなと思うことはあります。副作用や何かで眼科や耳鼻科を受診される可能性はあるし、処方薬以外のことを相談されることもあるので、小さなことに気付けるようにアンテナは広げておきたいと思いました。
■ 抗がん剤の中のギメラシルの役割と副作用への関連を認識することができました。腎障害の患者さんは増加傾向にあるので、認識を改めることができて良かった。閑話として「がん」と「癌」の学会内の違いも分かって有意義でした。
■ 薬物治療のそれぞれの薬の作用の仕方が図解されてとても分かりやすかったです。副作用の考え方も参考になりました。
■ 男女ともに亡くなる方の多い肺がん予防のために薬局でも禁煙を呼び掛けていきます。
■ がん患者様に投薬することはまれですが、投薬時に状態を聞き出すのには気を遣います。多くの知識を持って患者様とコミュニケーションをとれるようにしたいと思います。