第334回サンデーセミナー(2017年5月)専門医が紐解く、新生児医療の現場

第334回 サンデーセミナー
【日時】 2017年5月21日(日)9:30~14:15
【会場】 岡山市勤労者福祉センター5F第3会議室
【講義プログラム】
 ■『新生児医療の現場から』
  新生児科医師 森茂弘 先生(独立行政法人国立病院機構岡山医療センター)
 ■『経口フッ化ピリミジン系抗がん剤の役割と副作用マネジメント』大鵬薬品工業株式会社
 ■『精神科領域における薬物治療~パーシャルアゴニスト製剤・エビリファイの可能性~』大塚製薬株式会社
【研修認定単位】 2.0単位

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薬剤使用中の授乳中止は適切か?

これは、森茂弘先生から投げかけられた質問です。日本の医薬品添付文書では「投与中は授乳を中止」「授乳を避ける」薬剤が約75%もあります。しかしながら授乳中の方にも同様にお薬は処方され、薬剤師としては複雑な思いに駆られることがあるのも事実。
先進国ではじめてユニセフから『赤ちゃんにやさしい病院』に認定された岡山医療センター新生児科では、母乳育児を中心とした赤ちゃんにやさしい医療を信条としているそうです。母乳栄養には赤ちゃんにとって多くの利点があるだけでなく、授乳による母体・母親への好ましい影響も見逃せません。WHO・アメリカ小児科学会などによると「授乳禁忌」薬剤は3%のみ。「注意すべき薬」「懸念のある薬」を除いた74%の薬剤は授乳可能とされています。ほとんどの薬は母乳に移行するがその量は非常に少なく、有害事象の因果関係は不明なことが多いとのこと。母乳への薬の移行に影響する因子、乳児への薬の影響に関係する因子などを冷静に分析した、薬剤情報を得ることが重要だと教えていただきました。

最大規模のNICUを有する新生児医療の専門施設。その使命と現場業務の一端に触れることができた貴重な機会でした。森先生ありがとうございました。

森茂弘先生

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 受講薬剤師の感想より
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授乳中でも薬の服用に過剰な不安はいらないということ。授乳中の母親への薬物投与は特に薬剤師の説明いかんによって薬を服用しない恐れがあるので、適切に安心して服用いただくためのエビデンスを教唆してもらったので参考にしたいと思う。また本当に服用する必要があるのかどうかも考慮して、場合によっては疑義することも必要と思いました。

普段見ることのできないNICUの様子や治療について、たいへん興味深く学ぶことができました。新生児医療では出来る限り母体で育つこと、母体搬送が大事など、とても大事なことを学べたように思います。

授乳についてはよく質問を受ける部分だったので、今回専門医からの意見を聞けてとても参考になった。処方元の医師の意図も含め適切に服薬指導を行っていきたい。

内服中は授乳をやめるというのは赤ちゃんにも母親にも負担になるため、授乳中の方に投薬する際には、添付文書上の記載だけで頭ごなしに授乳を止めさせるのではなく、服用できる薬は安心して服用してもらえるよう、服用の工夫等しっかり伝えていきたいと思う。たとえばできるだけ授乳直後に内服する等の工夫を伝えてあげられると良い。

授乳と薬については十分理解が必要である。薬剤側の因子の理解、M/P比、RIDを考えていなければならない。常に薬剤情報を手に入れる努力が必要であり、よく使用される薬剤についてはあらかじめ理解しておく。相談を受けたら、母体・胎児にとって有効な投与を考えなければならない。

今回のサンゼミでは新生児医療についてその現場の様子や医療内容を知ることができた。新生児の医療は薬局で勤務している以上なかなか触れることのできない分野である。しかしすべての患児や授乳婦にとっては例外なく通ってきた道であり、それゆえに、医療者として知っていると思われていてもおかしくはない。そのため知識として知っておくだけでも、患者、来局者対応の幅を広げることができると思われるし、信頼関係の構築にも役立つと考えられる。

NICUの世界はなかなか知ることができないので、医師といえども治療だけでなく退院後の自宅生活の指導面が色々あり、力を尽くされていることが知れました。少子高齢化社会の中で周産期医療は大変重要でチーム医療で成り立っている。厳しい状況・環境で働かれていることを知り、頭が下がる思いです。

患者さん・ご家族の気持ちや介護の苦労を共有し、やさしく接し、出来ることを見つけて協力する。患者さんの仕草やお顔の表情など、以前のご様子と比べて何かしら気づくことができれば付添いのご家族とのお話の内容も広がると思う

NICUという普段我々が馴染みのない場ではあるが本当に命の最前線に立たれているドクターの業務に刺激を受ける部分が多々あった。妊娠と薬、授乳(婦)と薬という内容は外来でもよくあることなので授乳をできるだけ続けながら必要な薬を飲んでいただけるように努力を続けていきたい。

授乳回避の薬剤でも服用可能な場合が多いと聞いて安心はしましたが不必要や薬剤は飲まなくてもよいのでは…との意見ももっともだと思います。処方された薬についてなので対応は難しそうですが、授乳婦の方の判断を助けられるような助言をしたいと思います。あらためてそういったデータを集めていきたいと思いました。

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