第387回サンデーセミナー(2021年10月)【オンライン】地域連携「岡山赤十字病院」シリーズ⑤(糖尿病)

第387回 サンデーセミナー

【日時】 2021年 10月17(日) 9:50~12:30

【会場】 zoom会議室

     セントラルフォレスト(岡山市北区本町6-30第一セントラルビル2号館8階)より中継
【講義プログラム】
 ■『ライフステージからみた2型糖尿病』
  宮下 雄博 先生
  (岡山赤十字病院 副院長(総合内科)、糖尿病センター長)

 ■『糖尿病治療薬の現状と最近の話題について』
  國弘 啓行 氏
  (大日本住友製薬株式会社)

【研修認定単位】 1.5単位

 

糖尿病専門医でもある宮下雄博先生から、データと具体例満載で2型糖尿病疫学の最新情報をお話しいただきました。
生活習慣病の一つとされる2型糖尿病ですから、「糖質過多・脂質過剰の食生活は糖尿病になりやすい」ことは皆さんよくご存じのとおり。
2型糖尿病の患者数と動物性脂肪の摂取量、歩行習慣の減少、運動不足の相関関係はデータにしっかり表れています。
2型糖尿病では筋肉のグルコース利用率が低下しているため、筋肉での糖利用を促進したり、筋肉量を増加することで改善されます。運動療法が大事というのはこんな理由ですね。
「10分多く体を動かすことで健康寿命が延びる」
「高齢であっても十分量ロイシンが加えられれば若年者と同様にタンパク合成が増加する」
という嬉しい情報もいただきました。
そして・・・
「妊娠6ヶ月までに飢餓を経験した妊婦から生まれた新生児の80%が大人になってから糖尿病になる」
「日本人は欧米人に比べてインスリン分泌能が低いので少しの肥満でも2型糖尿病を発症しやすい」
・・・これは、ちょっと衝撃の事実です。
さらに、社会に存在する“糖尿病に対するスティグマ(負の烙印)”への警鐘も。このスティグマを放置すると、患者さんが糖尿病であることを周囲に隠そうとして適切な治療の機会を失いかねないこと。これは私たちみんなが意識し注意すべきことですね。

 

 

 

 

【受講者のこえ】

 

 糖尿病治療において、薬物利用だけでなく食事療法・運動療法の大切さを、種々のデータを見ることで改めて実感した。高齢者には「この年で運動なんかできない」と言われる方も多く、今まで運動療法についてはあきらめていた部分があったが、年相応の運動療法をすればよいことが分かり、今後の服薬指導に役立てていきたいと思う。運動療法の具体例は日々の服薬指導に役立つ非常に有益な情報でした。

 糖尿病の治療は薬物療法・食事運動療法を併用することでより高い治療効果が得られる。患者さんに対して薬が飲めているかだけではなく、検査値からも評価をして、食事・運動等も正しくきちんと行えているかも確認してフォローしていくことが大事なる。

 今回示していただいたデータから、糖質・脂質の摂取量やタイミング、また早食いによる圧倒的な糖尿病リスクなどを避け、また地中海食や適度なレジスタンス運動などの積極的な生活改善を勧めることで、薬局でも生活習慣病やフレイルを予防することができる。
特に高齢者ではBMIやHbA1cの値を若年者と同様に目標設定すると過度の栄養不足となるリスクがある。患者側にもその認識が少ないことがあるため、それに伴うフレイル等の予防に薬局の働きはとても重要となる。

 今回の講義では運動療法についても様々なエビデンスとともに紹介して頂き非常に参考になった。どうしえも薬剤師は口や皮膚から「吸収」されるものに対しての知識に偏り気味になってしまうので、こういった内容は嬉しいと感じた。

 宮下先生のご講演は、薬の使い方と運動療法について、たいへん服薬指導に屋だつ内容であった。特に運動面では高齢者に無理をさせてはいけないと考えてしまっていたが、できるところから動いてもらえるように少しでも筋肉が落ちないように指導できればと思う。少しでも立つことや座ったままできる足の動かし方はすぐにでも伝えていきたい。

 高齢の糖尿病治療患者さんへ、ライフステージに沿った運動・食事の具体的な声かけを行い、サルコペニアやフレイルを予防して健康寿命を延ばせるお手伝いがしたいと思いました。

 今までお薬手帳で糖尿関連の薬を見かけたら、即イコール糖尿病と思っていましたが、もしかしたら他の意図・目的が含まれているのかもしれないと思って見てみようと感じました。自分の店は高齢で眼科・耳鼻科受診の方が多いので、めまいやぼやけとかが実は低血糖が原因だった…ということがないように気にかけておきたいと思いました。
自分や家族・親の今後、食生活についても考えさせられました。糖尿と言っても年代によって気にすべきことが全く異なってくるんだなあと思いました。人生について考えさせられて深いなあと思いました。

 糖尿病患者においてその大まかな背景をおさらいできた。乳酸アシドーシスは重要な副作用であり折に触れて患者さんへの情報提供を行えるようにする。

 高齢者における食事療法・運動療法をいかに組み合わせることが重要かデータをもとに講演いただきよく理解できました。今後患者さんやそのご家族に服薬指導する際に活用していこうと思います。食事療法・運動療法は薬局で日ごろ直接かかわることは少ない内容だったのでとても勉強になりました。糖尿病薬がどういった視点で選択されているのかが改めて良くわかりました。

 低体力者への運動指導として、じっと座っている時間を減らし立って家事をするなど立つ時間をつくるよう指導する。片足立ち運動など、続けやすそうな簡単なトレーニングを具体的に紹介して頂き参考になりました。後期高齢者に対しては筋量を保つためにタンパク摂取を勧める。特にロイシンはタンパク同化を誘導するため重要。

 糖尿病治療薬の処方は内科での処方が多いのですが、他の処方薬も多いため待ち時間が長くなりがちなので患者様からの聞き込み時間が取れないことも多いです。まだまだ知識が足りないと実感しました。糖尿病食事療法・運動療法について、冊子等を活用したいと思います。

 2型糖尿病疾患に関する疫学的調査から判明したデータをもとに説明いただきました。高齢の患者に対する注意点や問題点等の具体的な説明をしていただき、服薬指導に生かすことができそうです。高齢患者さんには全身状態も常に考慮しながらアドバイスを行います。

 サルコペニア予防のための食事として、鶏卵・ツナ缶・さば缶・納豆・絹豆腐を調理せずに一品追加することで手軽にロイシンを摂れることを紹介したいです。高齢糖尿病患者さんでは「めまい・ふらつき・元気がない・ぼやけて見える」という低血糖症状が出ることがあるので、疑わしい時はブドウ糖。果物ジュースをとって改善するかどうかみていただくことを本人や家族の方にもお伝えします。

 糖尿病の患者様へ投薬時は薬のことしか話していなかったが運動・食事についてもきいてみようと思います。フレイルチェックでは高齢者で糖尿病の患者様ではBMIが低いことが問題になるかも、と念頭に置いて取り組みたい。

 2型糖尿病患者の食事と運動療法の大切さについて改めて知れて良かった。サルコペニア・フレイル対策についても具体的な食事メニューや診断をわかりやすく説明して下さって勉強になった。

 

  

続いて、大日本住友製薬株式会社の國弘啓行氏の『糖尿病治療薬の現状と最近の話題について』。各治療薬の有益性と注意点、最新の糖尿病治療薬ガイドラインを中心にしたご講義は、処方意図の理解や、医師への情報提供にも役立つ内容でした。

 

 

【受講者のこえ】

 

 最近本当にHOTな薬であるSGLT2阻害薬についてもっと実情を知りたいと思っていたため、今回の講演で伺うことができてとてもよかった。

 SU薬、インスリン製剤、グリニド薬服用中の患者には低血糖リスクを注意する。メトホルミン服用中患者には脱水時など乳酸アシドーシスに注意する。

 改めて禁忌項目を今一度見直し、さらに乳酸アシドーシスの初期症状と思われる症状を患者さんと関わる際に見逃さずに対応していきたいです。乳酸アシドーシスは実際に起こると重篤となる可能性が高い副作用なので、薬剤の作用機序から説明いただきとてもよく理解できました。

 年々状況が変わっていくので新しい薬や治療法の話題は定期的に気にかけておきたいです。久しぶりに糖尿薬についてまとめたデータを見て、昔とは変わったなあと思いました。言われてみればSU剤を使っている人にほとんど出会わなくなったな、と。

 糖尿病の治療チャートや血糖降下薬の選択方法、BG剤の乳酸アシドーシス、新薬ツイミーグの作用機序と有効性等、理解が深まりました。糖尿病薬の種類ごとの特異性をよく理解し、より適切な調剤と服薬指導を行えるよう努力します。

 イメグリン塩酸塩とSU薬を併用するときは低血糖、ビグフナイド薬と併用するときは胃腸障害が起きていないか特に気をつけて確認したいと思います。乳酸アシドーシス予防のためにメトホルミン服用中の患者さんにはアルコールを過度に摂った日は休薬するよう再度確認させてもらいます。
ガイドラインや安全性についての話は医師への情報提供にも生かせると思いました。

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