第388回 サンデーセミナー
【日時】 2021年 11月21(日) 9:50~12:30
【会場】 zoom会議室
SWITCH WORKS(岡山市北区本町6-30第一セントラルビル2号館7階)より中継
【講義プログラム】
■『現在の保険医療の現状と地域包括ケアの中で保険薬局に求められる事~新しい薬薬連携の形へ~』
亀井 健人 先生
(倉敷中央病院 薬剤部 病棟薬剤室長)
■『てんかん重積状態の疫学、病態、治療について』
東 隆司 氏
(武田薬品工業株式会社)
【研修認定単位】 1.5単位
高齢化の進展により、主要な医療ニーズは慢性疾患を中心とするものに変化してきました。地域包括ケアシステム構築の中で、急性期病院の病床確保と救急医療の維持のため、急性期・救急医療は病院で、回復期・慢性期医療は地域で、という枠組みが今や医療業界ではスタンダードになっています。
スムーズな在宅復帰・在宅医療支援体制を機能させ質の高い医療を提供するためには、情報共有と連携が不可欠。中でも安全で適正な薬物治療の継続に欠かせないのが「薬薬連携」です。
12月のサンゼミでは、急性期医療を担う倉敷中央病院の亀井健人先生から、“倉中”の実例をふまえて連携の意義、目的、効果的な方法など、幅広い観点からお話しいただきました。
また、日本は高齢化による医療費の伸びが問題視されているが、じつは世界的にみると対GDP保険医療支出は抑えられている、一方でベッド数あたりの医療者の人数が少ないという事実をご指摘いただきました。医療の安全性確保と業務効率化のため、森山圭先生(就実大学)とともに開発中という、分光分析技術による散薬支援監査装置「コナミル」をご紹介いただきました。
【受講者のこえ】
■ 病院薬剤師さんの話が聞けて勉強になりました。薬局以外で活躍されている薬剤師さんのお話が聞けるのは新鮮でした
■ 近赤外分光法により分包後の散薬監査できる機器の開発の話。たいへん画期的だと思う。目視と重量でしかできなかったのを非破壊でできるのは驚きだった。調剤・監査時に感じる難しさ・不便さを当然のこととするのではなく、どう減らしていくのかという意識をもちたい。
■ 倉敷中央病院の調剤機器「コナミル」の使用について具体的な説明を聞き、リアルな現場の状況を垣間見ることができました。監査システム機器使用で合理化されたかどうかの検証では、危機対応やメンテに人間の手が結構かかるとの結論が興味深く、また理解できる面がありました。
■ 退院時の医療機関から調剤薬局への情報提供は、おくすり手帳を通じて受け取っていますが、それだけでも非常に有用なものとして役立っています。患者の薬剤情報を十分に把握し、より的確な服薬指導を心掛けます。おくすり手帳を病院ごとに分けている患者さんがいますが、一冊にまとめることの必要性を伝えていきたい。
■ 退院して入院前の薬と変わっていることも少なくなく、患者さん自身も完全に理解されている人は多くないように感じていました。連携の必要を感じても、門前でない病院に問い合わせはしづらく感じていました。今回、病院も薬局と同様に情報共有を欲していると知り、少しずつでも連携していきたいと思います。また、お薬手帳の重要性を再認識したので、患者さんへの持参推奨を続けていきたい。
■ 病院との薬剤情報共有のあり方など、病院側が求めていることを教えてもらったので、それを生かしていきたい。患者さんが入院されしばらく来局されなかったときなど、薬局では患者さんに尋ねることでしか情報を得ることができず、薬剤変更の内容など正確な情報を確認するのが大変でしたが、電子上で見られるととても役立つと思いました。
■ 倉敷中央病院の取組みとして「入院時薬剤情報提供書」「退院時薬剤情報提供書」について詳しく教えて頂いたので、今後ファックスがきたら対応できるように努めたいです。専門的な内容が分かりやすく説明されて理解しやすかったです。
■ 散剤の計量時にボトル交換する際には、新旧ボトルを残しておき出来ればダブルチェックを行う。おくすり手帳を病院ごとに分けている患者さんがいるが、一冊にまとめることの必要性を理解してもらう。
■ 入退院においての薬剤情報提供共有について、情報をいただけたらとても助かるので、こちらからも薬剤情報はもちろんのこと、患者背景などの情報提供ができるようにしていきたい。いつでも情報提供できるよう薬歴の内容の充実をはかりたい。地域医療において患者は病院、診療所、介護施設を回るため施設間での情報引継ぎが必要となる。
■ 入院時の手術決定から退院までに倉敷中央病院薬剤部が行っている事についてよく理解できました。薬局薬剤師としてこれから特に何が必要か見極めることの重要性を再認識しました。薬剤に関する患者情報の収集を的確に行い、必要時に薬局として情報提供を行い情報を共有していこうと思います。
■ 現状は粉を量る時にバーコード監査していますが、紹介されたように分包後の中身がチェックできるようになったら安心だし助かるなと思いました。倉中との薬薬連携について、書類を見るだけでなくいろいろ口頭説明していただいたことで、今後活用しやすくなりました。
■ 今後電子処方せんが普及すれば薬剤リストはシステム上で管理できる。薬剤だけを見るのではなく患者背景を把握する力が一層求められる事を実感しました。
■ 業務の中で患者様が「病院の先生からの手紙です」と自賛してくれることがあります。患者様の状況がよくわかり、投薬にとても役立っております。今後薬局の方からの情報フィードバックが必要なときは有益な情報提供ができるようにしたい。
■ 患者さんが処方箋を持ってこられて、何のために処方されたのか判断に迷うことが多い。地域包括ケアに対応した各医療機関との薬剤リストと薬剤に関する患者情報の共有ができるようになることは適切な薬物治療につながると思う。何のために処方されたかが分かると漫然投与の防止につながり、ひいてはポリファーマシーの改善にもつながっていくと思われる。
■ 倉敷中央病院の入退院時の薬剤情報連携は有り難いシステムだと思った。同意の取れた患者さんのみの運用とのことだが、広まってくれることを期待している。患者さんの意向に沿う医療を提供するためには、背景を知ることがとても大切。薬局と病院とで情報共有できると、さらに質の高い医療サービスになると思う。倉中の取組に協力していきたい。
続いて、武田薬品工業株式会社の東隆司氏から『てんかん重積状態の疫学、病態、治療について』。てんかん重責状態の定義、てんかん発作・てんかん・熱性けいれん・熱性けいれん重積状態の定義、急性脳症の定義を再確認し、てんかん分類とてんかん重積状態の疫学を勉強させていただきました。熱性けいれん重積状態の治療薬に口腔用液(頬粘膜投与)が登場したことは大きなトピックスです。
【受講者のこえ】
■てんかん重積状態についての病態をよく理解できました。後遺症が発生しないよう速やかに治療を行う必要がある事、てんかんを患っている患者さんに服薬指導を行う際には今回の講演の内容を念頭に置きながら対応していきたい。
■てんかん発作はてんかんだけの発作でなく、熱性けいれんや脳炎など他の症状によるものも含まれていると理解した。患者さんの中には救急車を呼ぶことに抵抗がある人もいると思うが、発作が続くことのデメリットを理解してもらい、その上で判断するよう服薬指導の時に伝えていきたい。