第395回 サンデーセミナー
【日時】 2022年 6月19(日) 9:50~12:30
【会場】 zoom会議室
SWITCH WORKS(岡山市北区本町6-30第一セントラルビル2号館7階)より中継
【講義プログラム】
■『痛み止めと骨粗しょう症について』
田中 雅人 先生
(岡山ろうさい病院 副院長・整形外科部長)
■『非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬(トラマドール製剤)の有用性と適正使用』
竹原 明 氏
(ファイザー株式会社)
【研修認定単位】 1.5単位
ヒリヒリ、シクシク、ズキンズキン、チクチク、ジンジン、
灼けるような痛み、刺さるような痛み、しめつけられるような痛み…etc.
医療機関を受診する一番の理由は「痛み」だと言われますが、「痛み」にはいくつもの種類があり、様々な割合で組み合わさっています。痛みが長引くと精神面にも悪影響を与え、生活の質(QOL)を低下させるばかりか、要介護を招くこともあります。
6月のサンゼミオンラインでは、岡山ろうさい病院の田中雅人先生(整形外科部長)から、健康寿命に大きく影響する「痛み」と「骨粗鬆症」をテーマにご講義いただきました。
痛みの定義、痛みの分類、痛みへの処方と治療、骨粗鬆症の病態と治療薬、外科的治療、骨折のリスクと健康寿命。疼痛治療と整形外科分野における話題を幅広くお話しくださいました。
骨粗鬆症はそれ自体で命に関わるものではないけれど骨折してしまうと途端に生命予後を悪化させる侮れない病気。骨粗鬆症の有病率が、高血圧や糖尿病よりも大きいことは衝撃的でした。
外面から推し量るのが難しい「痛み」と「骨粗鬆症」ですが、薬剤師として患者様の「痛い」「しんどい」に寄り添っていきたいものです。
【受講者のこえ】
■ 骨粗鬆症の方への服薬指導、病態、薬の使い方を理解することができた。手術の様子など貴重な画像を拝見しとても参考になった。今後の業務に役立てていきたい。
■ 皮膚科の帯状疱疹後疼痛の治療が長引く患者様の疼痛に対する理解、薬の選択がよくわかり、患者様の痛みの感覚、心因性は無いかと考えるヒントになった。
■ オペの映像も見ることができ最新の技術にふれることができた。Drの意図も理解できたいへん勉強になった。
■ 実臨床における診療経験を通しての講演、非常に有意義でした。
■ 骨折が一度起こると、2度3度と起こりやすくなり、QOL低下が問題となってきます。症状が無い場合、薬の服用を続けることが難しいことも多いので、患者様と一緒に続ける工夫を考えていきたいと思いました。歯科治療との関係や休薬によるリスクなど、その薬だけでなく他の事例についても知識を深めていきたいです。骨セメント等新しい治療もあり、高齢者でも手術が可能で傷も小さいので、回復に繋げることができるようになっていると感じました。痛みは痛み止めとすぐ考えてしまいますが、不安等の心因性もあることを覚えておき、患者様の対応に役立てていきたいです。
■ 医師の処方意図が聞けてよかった。高齢者の悩みに多い腰痛にアドバイスができるようにする。フレイル、ロコモティブシンドローム、サルコペニアに合わせて生活指導をする。
■ 痛みや骨粗鬆症について等薬の際にアドバイスできればいいなと思います。骨粗鬆症の手術について詳しく教えてもらえてとてもよかったです。実際の処方意図について教えてもらえたのがすごくためになりました。ビスホスホネート製剤服用中の方への抜歯などの歯科治療を行う場合の対処は、患者さんからよく聞かれるところなので活用していきたいです。
■ 臨床のドクターによる具体的な講義内容が非常に参考になるとともに、服薬指導に即活用できる助けとなった。鎮痛薬が処方された患者に対し、痛みが何に起因しているのかを推測し薬の効果と副作用の状況について注意深く観察し、適切な服薬指導を行う。骨粗鬆症患者に薬の継続使用の重要性を認識してもらい、副作用と適正使用に注意を向ける。
■ 処方意図について話が聞けて大変勉強になりました。患者様に対する診療についても聞くことができ参考になりました。骨粗鬆症による骨折はその予後、QOLの低下、生命予後の低下にもつながることを改めて認識することができ、健康寿命を延ばすためにも薬を渡すときも服用継続につながる投薬を心掛けたいです。骨粗鬆症の予防や早期発見にも取り組みたい。
■ 痛みの分類には感覚と情動の二つの側面があるということで、出された薬を適切に指導する。ビスホスホネート製剤が出されている患者さんでアドヒアランスが悪い人には他の方法があることを提案する。お薬手帳にプラリア接種と記録していていつまで続けるのかわからなかったのですが、ずっと続けることがわかりそれも見落とさないようにしたいと思います。
■ 痛みは主観的なものであり、痛みに対する不快感や不安、恐怖感も痛みに含まれるので、そういったことも視野に入れて服薬指導していきたいと思った。自殺企図の可能性のある患者さんにサキンバルタは注意する。痛みがあり腰が曲がっているような高齢患者さんには必要に応じて受診を勧める。
■ 今まで痛みについてこのように考えたことは正直ありませんでした。痛みとはキズなどの損傷が原因でおこるものか内因性の原因によって起こる頭痛や腹痛などと漫然と思っていました。田中先生のお話をうかがって、痛みとは不安や恐怖などの不快な感覚を伴う情動体験で、感覚や認知や情動的な側面から構成されているものであり、痛いと感じることは刺激の強さだけでなく、心理的状態にも影響されていることを認識させていただきました。目からウロコの思いでした。感情と身体的な痛みが連動していることを念頭に患者さんと向き合うことで痛みの軽減緩和、QOLの向上に繋げたいと思う。
■ アセトアミノフェンorNSAIDsが侵害受容性疼痛に使用されるなど第一選択薬をきちんと理解しておくことで、痛み止めの出ている患者様に適切な話や服薬指導に役立つと感じた。骨粗鬆症に伴う大腿骨近位骨折は死亡率も上昇する重大な症状であるため、薬を飲まれている人だけでなく、健康教室など高齢者全体に啓発していって良いことだと思った。服薬指導時にも注意喚起出来たらと思う。
■ 疼痛の考え方は客観的に評価できることと主観的にしか評価し辛い内容もあり、薬の扱いが難しいと感じました。何種かの薬あるいは増量によって疼痛コントロールが出来ている場合に、そこから減量減薬する流れで患者さんに自己調整をお願いする方法は減薬への不安感、抵抗も少なそうであり、非常に有用だと感じました。また鎮痛剤の種類に応じて様々な消化器症状、傾眠等の可能性もあり、事前に指導をしっかり行おうと思います。
日本人の平均寿命は長いにもかかわらず健康寿命との差は男女とも10年近くあり、その差を縮めるために予防・治療によって要介護・要支援状態にさせないことは重要であり、先ず予防に関しては富永薬局でも実施しているフレイルチェックを活用し、必要に応じて受診勧奨を行うことがサポートの第一歩だと感じました。また、骨粗鬆症に関して一度骨折すると再発リスクは非常に高くなるので、骨粗鬆症に関する薬の服薬指導・フォローは当然として、眠剤やリリカ等の傾眠作用を及ぼす薬剤を服用中の方には転倒リスクを十分に把握してもらうよう説明を実施していきたいです。
■ 痛みとは主観的なもので第三者がその痛みを否定してはいけない。田中Drの患者さんとの向き合い方、治療方針など余すことなく講演下さり、薬局における薬剤師としてできること、気づけることなどがあると実感いたしました。日々の業務に生かしていきたいです。
■ 痛み止めの処方が多科受診で重複していないか、腎機能障害が出ていないかを血液検査の数値で確認する等を意識しておく。Drの処方意図がわかる内容は投薬時の疑問が解消される。薬局ですべきことをDrから伺えるのも役に立つ。
■ 出された薬をみてどんな症状なのか判断できる必要があると思いました。また上限量を覚え、監査の時点で判断する必要があります。お薬手帳を見て骨粗鬆症のリスクがある可能性がある方には、受診を勧めるなど、考えながら投薬できるようになりたいです。骨粗鬆症について大学時代の教材や資料でもう一度復習しようと思いました。
■ みやすく聴きやすい講義でした。痛み止めの使い分けについて理解することができた。どんな痛みがどのくらい続いているのかを患者から聞き取り、出ている痛み止めが適切かを見ていきたい。どのような診察を経てどのような薬が選ばれているのかについて、医師目線での話が聞けて非常に参考になった。
■ 骨粗鬆症薬の自己休薬をしないように指導することが重要。痛み止めをいつまで服用するかという質問もよくされるため、田中先生の講義を参考にし、主治医に相談してもらうよう患者さんに促す。NSAIDsの長期服用による副作用を想定しながら主治医に提案していく必要がある。田中先生の講義は、治療方針や薬剤選択の意図等、普段聞けない内容でとても参考になった。手術症例の紹介や手術法の紹介もとても興味深かった。今後もできる限り医師の講演を聞き、日々の業務に生かせる知識を増やしたい。
つづいて、ファイザー株式会社・竹原明氏から、慢性疼痛の疫学と慢性疼痛ガイドライン、最近の薬物療法についてお話を伺いました。
【受講者のこえ】
■ 慢性疼痛治療中の患者に対し納得してくするを服用していくよう指導をしっかりとしていきたいと思う。
■ オピオイド鎮痛薬の有用性を上手に伝えたい。
■ 慢性疼痛に対する鎮痛薬処方のガイドライン、日常処方箋でよく目にする鎮痛薬(トラマール等)の扱い方の注意点について理解が深まった。トラマドール製剤の特性をよく理解した上で、患者が適切に使用できるようアドバイスし、頻度が高い副作用の悪心嘔吐・便秘については患者の状況に注意する。
■ オピオイド鎮痛剤の副作用をきちんと説明する。ロキソニンを処方された患者さんで胃イが弱いと言われた方にDrに相談するよう提案したところ、Drから医者でもないのに余計なことを言うなといわれ凹んでいたのですがこれからも提案してよいと分かりました。
■ 非オピオイド鎮痛剤に接する機会が無い現状ですが、非オピオイド鎮痛剤の適応症や副作用について学んでおくことで在宅訪問時に患者さんに安心して服用していただける環境や信頼関係を気付けるよう努めたい。