第401回サンデーセミナー(2022年12月)【オンライン】地域連携「岡山ろうさい病院」シリーズ⑥

第401回 サンデーセミナー

【日時】 2022年 12月 18日 (日) 9:50~14:00

【会場】 zoom会議室

【講義プログラム】

 ■『多発性骨髄腫の病態と治療』

  『血液疾患患者に対する新型コロナウイルスワクチンについて』
  矢野 朋文 先生
  (岡山ろうさい病院 副院長、内科部長)

 ■『進行・再発非小細胞肺癌におけるドライバー遺伝子検査とKRAS G12C変異陽性に対する治療について』
  小西 智行 氏
  (アムジェン株式会社)

【研修認定単位】 1単位

   

サンゼミがお届けする地域医療連携シリーズ。第6回目は岡山ろうさい病院 副院長の矢野朋文先生です

 

多発性骨髄腫は“血液のがん”のひとつ。血液細胞の1つである形質細胞ががん化する病気で、骨に大きな影響を与えます。発症するのはほとんどが60代以上なので、高齢化が進み今後ますます増えてくると予想されています。
調剤薬局に勤務する薬剤師にはあまり馴染みのない疾患でしたが、がん医療も在宅で受けられるようになった現在、患者さんをサポートするためには学んでおくべきテーマです。

 

 

第401回サンデーセミナーでは、岡山ろうさい病院の副院長で内科部長を務められている矢野朋文先生に、多発性骨髄腫の病態と治療についてご講義いただきました。
臨床資料も多数提示しながら、多発性骨髄腫の基礎から最新の治療まで丁寧に講義してくださり、参加者は皆さん熱心に聞き入っていました。
薬の進歩により延命効果が確実に出てきていることも分かり、薬剤師にとってはとても深い学びとなったご講演でした。
あわせて、血液疾患患者に対する新型コロナウイルスワクチンについてもお話しいただき、使用している抗がん剤の種類でワクチンでの抗体獲得に大きな差が出るという事実に驚きました。


矢野先生、ありがとうございました。

 

 

 

 

【受講者のこえ】

  多発性骨髄腫の臨床症状で骨髄腫細胞の造血抑制・M蛋白・骨破壊によりそれぞれの症状が出ること。免疫グロブリン(Ig)定量と蛋白分画を行うことで、くすぶり型骨髄腫と症候性骨髄腫の判別ができること。多発性骨髄腫の基本を分かりやすく理解できました。最新の治療薬は、プロテアソーム阻害剤(PI)・免疫調整薬(iMiDs)・HDAC阻害剤・抗体医薬・キメラ抗原受容体T細胞がある。普段の業務ではなかなか見かけない疾患なので、最新治療薬についての知識を深めたいと思いました。血液疾患患者では、健常者に比べて新型コロナウィルスワクチンの中和抗体ができにくいことも分かりました。

  普段、あまり多発性骨髄腫の症例に触れることがなかったので、新しく知ったことが多かった。多発性骨髄腫は70歳代以降が中心。2000年以降、年齢調整死亡率は低下傾向。新しい治療薬が出てきたことが年齢調整死亡率の低下につながっていると考えられる。多発性骨髄腫は形質細胞が癌化したもので、1つのグロブリン分画が多く作られ、他の分画は合成が抑制される特徴を持つ。そのため、他のウイルスや細菌に対する抗体産生が抑制され、肺炎や尿路感染など感染症になりやすくなる。また、特定のグロブリン分画が多く産生されることで、腎障害や過粘稠度症候群、アミロイドーシスなどを引き起こす可能性がある。その他、造血抑制による貧血や骨吸収促進による圧迫骨折などを引き起こしやすくなる。治療は基本的に症候性骨髄腫に対して行い、くすぶり型骨髄腫は注意深い経過観察を行う。

  CT画像を解説や実例について解説いただけたりしたのでわかりやすかったです。普段、多発性骨髄腫の方の治療に携わることがないのですが、多発性骨髄腫を患っている方が他科受診され薬が処方されたら投薬を行う可能性はあるので、今回の講義はとても勉強になりました。多発性骨髄腫には「くすぶり型」というのがあって経過観察のみで治療をしないということは衝撃でした。コロナワクチンのことにおいても、最終的に主治医の判断に委ねる事になるとしても、知識として中和抗体が出来にくい事は抑えておきたいと思います。患者様から相談されたときにお伝えしたいと思います。ビスフォスフォネート製剤やデノスマブ使用中の注意も再確認出来ました。日々の業務に活かしていきたいと思います。

  多発性骨髄腫の病態について詳しく聞く事ができてよかった。検査方法についても詳しく聞く事ができたので、投薬時に今回の話を織り交ぜながら患者さんとの話を進めていきたいと思った。治療方法はファースト選択が臓器移植、それができない場合は保存的療法であるため話の進め方等気をつけていきたいと思った。コロナウイルスワクチンの話で、造血器腫瘍患者はワクチンでの中和抗体が出来にくいことを知る事ができた。そのため、そのような患者さんには感染対策として手洗いうがいなど基本的な予防方法を投薬時に話していきたいと思った。

  今まで多発性骨髄腫という病名は聞いたことはあっても、どんな症状なのか、どんな治療を行うのかなど恥ずかしながら何も知りませんでした。骨髄腫細胞が骨の組織を破壊することで、高カルシウム血症・病的骨折・圧迫骨折・脊髄圧迫症状などが起こり、造血抑制がかかることで貧血・白血球減少・血小板減少などが起こり、M蛋白が増えることで腎障害・アミロイドーシスなどさまざまな症状が起こることを知りました。ただ腰が痛いとかで終わらせてしまうことはとても怖い事なんだと思いました。腰が痛いとかってかなり多くの方が言われているが、その中にはただの腰痛ではない人が隠れている可能性があるので、患者様の症状など細かく聞き取るようにしていかないといけないなと再認識しました。セミナーではいろいろ勉強するきっかけを与えてもらえるので有難く受講させて頂いております。

  普段、接することのない病気だったが、基礎的な事から内容があり、要点、まとめがあり、わかりやすい内容でした。難しい内容に思えましたが、病気の疫学から、背景、病態、治療、症例までがあり、つながった内容で、とてもわかりやすく感動しました。貴重な講演ありがとうございました。

  多発性骨髄腫の疫学・病態および診断・治療について理解できた。今勤務している薬局では多発性骨髄腫の患者さんに接することはないので、知らないことが多く、興味深く拝聴した。高齢での発症が多く、患者さんの背景と相談しながらの治療が必要で医師との信頼関係が大切な難しい疾患だと思った。もし患者さんに接することがあれば、今回の内容を理解しながら対応したい。血液疾患治療中の患者さんでは、特定の薬物治療を受けている方以外では、新型コロナウイルスワクチンの接種は有効とのこと。コロナに罹患すると重症化リスクが高いこと、一度回復しても再燃の場合があることも示され、接種の大切さを改めて理解した。

  多発性骨髄腫の病態、疫学についてわかりやすく説明して下さったので勉強になりました。多発性骨髄腫は形質細胞のがん化によるもので高齢者に多い。高Ca血症、骨病変、腎機能障害、貧血などの症状が現われる症候性と無症状のものに分類される。移植の条件を満たせば骨髄移植を行う選択肢もある。骨病変でビスホスホネートを服用している患者さんには顎骨壊死の副作用に注意してもらうため、歯医者の受診がないか確認をしっかり行いたい。感染症対策のため、手洗いやうがいをしっかり行うことも伝えたい。ボルテゾミブでは肺障害、末梢神経障害、帯状疱疹などの副作用対策にも寄り添っていきたい。多発性骨髄腫の患者さんにはコロナワクチンを接種しても抗体ができにくいので接種するメリットはあまりないので聞かれたときにうまく答えられるようにしたい。多発性骨髄腫の患者さんの治療法や経過についても説明して下さったので勉強になりました。

  受講前から難しそうなテーマだと思っておりましたが、実際、難しかったです。分子標的薬等の治療薬については普段、ほとんど投薬することがないので、学生時代の知識も割りと抜けてしまっていました。現在の職場で、「多発性骨髄腫のメインの治療」に係わる機会は殆どないと思います。一方で、多発性骨髄腫を発症されている患者が、それとは別に罹っている疾患の治療に関わる機会はあるかもしれません。また、治療を担当する医師やその病院の薬剤師にはなかなか言えない不安や疑問を、関係ない疾患で利用している薬局の薬剤師にちょっと聞いてみよう…ということも何度か経験しています。病態や疫学、治療の流れや起こりうる副作用についてはわかりやすい形でまとめておいて、患者からなにか聞かれたときにその不安や疑問を解消できるようにしておく。治療そのものからは遠いところにいる薬剤師でもできることではないかと思います。

  病変の画像など丁寧な説明ででわかりやすかった。血液疾患患者さんに対応することはほとんどありませんが、腰痛の主訴から確定されることがあることが分かり、全く関係ない病気ではないことが分かりました。難しい疾患であり、投薬する機会はないかもしれないが、知識として知っておかなければならないことだと思いました。

  大学時代、国試の病態範囲で多発性骨髄腫の勉強していた内容が今回の講義で蘇りました。リンパ腫白血病にに比べて罹患率は少なかったり、年齢調整死亡率は低下傾向であったり、治療イメージは寛解期間は後になるにつれて、短くなること等病態概念が整理できてよかったです。薬剤に関して言うとプロテアソーム阻害剤、免疫調整薬、抗体医薬等があり、治療は3剤併用療法が基本になることは、普段業務で触れていないので忘れていました。今後患者さんで外来治療で多発性骨髄腫を患っている方が、来局される機会が訪れることがあったときに基本的な病態概念が説明できる状態にしておきたいです。あと患者様に何か治療のためになること、生活において気を付けるべきこと等薬局薬剤師としてできることがないか改めて今後考えていきたいと思いました。

  他科・他院からの紹介までにどのような検査が行われているのかを学んだ。「骨病変がある」「貧血がある」「蛋白質/アルブミン値の異常がある」など、薬局でも聴取・確認できる事項がいくつかあった。多発性骨髄腫はその他のがんと比べると割合の少ない疾患ではあるが、罹患の可能性も考慮に入れられる程度には知識が身についたと感じる。また、治療選択を行う際には3つの要因(患者要因・疾患要因・治療要因)を考慮することが必要であると学んだ。患者要因には合併症や臓器機能、社会的支援の有無が挙げられる。治療要因には前治療、奏功期間、副作用が挙げられる。これらの具体例を見て、薬局から医師への情報提供を行う際にも価値ある情報を提供することが可能と考えた。

  病態的にあまり扱うことのないもだったが、疫学・病態・診断・治療まで幅広く丁寧に教えて頂き、興味を持って話が聞くことができた。60代後半から罹患率が上昇し、患者層の中心は70代と聞き、立地的に高齢者が多く来られるところなので、今後に活かしていけたらと考える。貧血症状になり、男性はIgG7の上昇、女性はIgAの上昇がみられるということで、検査結果を見せてもらうこともあるので、そこも注視していけたらと思う。新規薬剤も年代別・時系列になっていて、理解がしやすかった。血液疾患患者における新型コロナワクチンを接種したとしても、コロナへの抗体ができないことに驚いた。サリドマイドの薬害事象はやはりいつになっても気を付けるべきことであると考えさせられた。

  多発性骨髄腫という病気をよく知らないので、難しかったですが、新しい情報は積極的に取り入れてこれからも知識を更新していかないといけないなぁと思いました。いざという時に反応でき、必要に応じて調べられるように、大雑把にでも情報として頭の片隅に入れておきたいと思います。言われてみればその可能性あったなぁ、とハッとしたのが血液疾患(特にリンパ腫系統)の方に新型コロナワクチンでの免疫獲得ができにくいこと。特にJAK阻害薬使用者はほぼ免疫獲得できていないデータだったので、説明時要注意だなぁと思いました。併せて、予防的な選択肢、対処があることもお知らせしないといけないなと思いました。

  基本的な事ではあるが他の血液のがんと多発性骨髄腫の違いは何かの知識を得られたことは大きかった。多発性骨髄腫や悪性リンパ腫で誰かが亡くなるニュースを見ても今までは「血液のがん」と一括りに考えていたものが最新の薬と治療の結果とみることができるようになり見方が変わったように思う。血液検査の結果の講話では多発性骨髄腫で特徴的な結果を教えていただき病態理論と検査結果がスッキリと一致する内容でありとても分かりやすかった。ただ、薬については医療機関における注射剤が主なものである内容だったため薬局業務に役立つかの面では微妙だった。それでもサリドマイドやその誘導体の薬剤を実際に使用されている立場の医師の話を聞くことができその面では大変興味深く学ぶことができた。

  今まで多発性骨髄腫の患者さんと関わることがあまりなかったため、今回の講義に関して知らなかったことがとても多く大変勉強になった。ここ数年の免疫療法の進歩で治療方法も大きく変わってきていることを実感した。治療薬の一つにサリドマイド剤があり、かつて薬害被害で問題になった薬だが、研究の結果、効果の高い薬であることがわかり、再び薬害被害を出さないための適正使用のためのガイドライン作成、責任医師、責任薬剤師等の登録、患者さんへの説明、同意等の手順が定められていることを知った。この薬に限らず、薬剤師の役割のひとつである薬剤の適正使用をするためにできることを一つ一つ行っていこうと強く認識した。

 


 

富永薬局のサンデーセミナー(通称『サンゼミ』)は、薬剤師であればどなたでも無料で受講できるオープンセミナーです。毎月第3日曜日に、Zoomによるオンライン配信で開講。受講薬剤師には「薬剤師あゆみの会」から、認定薬剤師の研修単位が付与されます。

 

サンゼミ参加申込受付中

かかりつけ薬剤師を目指す地域の薬剤師さん

仕事を離れていても学びを続けたい育休中の薬剤師さん

薬剤師生涯教育を先行体験したい薬学生さんのご参加も歓迎です。

 

第401回サンデーセミナー(2022年12月)【オンライン】地域連携「岡山ろうさい病院」シリーズ⑥メニュー